新世紀のキャンパス 茗荷谷キャンパス・駿河台キャンパス/中央大学

都心キャンバス整備
法学部と法科大学院の連携、文理融合、経営と法律の融合

 中央大学は、2015年に、中長期事業計画「Chuo Vision 2025」を策定し、その下で多くの改革が進められている。この度2023年4月に、法学部を都心の茗荷谷キャンパスに移転し、近接する場所に駿河台キャンパスを開設し、そこに法科大学院とビジネススクールを移転した。

 こうしたキャンパスの再整備によって実現したいことは、次の3つである。

 法学部の法曹コースと法科大学院を接合し、法科大学院在学中に司法試験を受験し合格を目指す新しい法曹養成制度の下で、近接するキャンパスに所在する法学部と法科大学院の緊密な連携を進める。

 法学部と以前から都心にある理工学部と国際情報学部が連携し、文理融合科目を共同開講する等により、文理融合教育を進める。また、理工学部と法学部及び法学部と共に都心に移転する日本比較法研究所を中心として文理融合研究をさらに促進する。

 また、駿河台キャンパスでは経営と法律のさらなるコラボレーションを進め、経営の分かる法律家、法律の分かる経営者を養成することを目指す。

茗荷谷キャンパス
光あふれる古典的形象

  中央大学の創始者が学んだイギリスのミドルテンプルに敬意を表し、基壇部は石の尖頭アーチ、上層部はレンガを用いて品格あるファサードを作った。ファサードの窓は伝統から未来へ開いていく思いを込めて斜めカットガラスとした。

 周辺の住宅や学校との調和を図り、外に緩やかに閉じた建物の中央に2カ所の大きな吹き抜けとトップライトを設けた。その吹き抜けに沿った∞状の動線により建物全体のアクティビティをつなぎ、一体感のある、明るく開放的な空間を形成した。

  「秋霜烈日」のごとく真実を照らす自然光をテーマとし、長時間勉強する学生の生活リズムを整えるために自然光と呼応したSKYSYNC照明や、学習効果を高める自然光スペクトルを持った照明などを採用した。学生食堂や図書館はミドルテンプルをモチーフとした重厚で格式ある空間とし、隣接する高層マンションに面した場所には屋上庭園を設え、その庭園を望む開放的なラウンジを配した。1階の特大教室は中大カラーの赤を用いた落ち着いた空間に仕上げ、国際会議やセレモニーを行うホールとしての機能も持たせた。吹き抜けを伴った明るい内部空間の各所には学生が集える小さな空間を多数確保した(1000席ほどの椅子やソファー席、WEBブース席などを配置した)。

 茗荷谷キャンパスには郵便局、保育所、キッズルーム等の施設のほか、地域活動センターも入っており、地域インフラの一翼を担うと共に、1階のスターバックスコーヒーは学生と地域の方々のオアシスになっており、地域に開かれた新たな知の拠点として、茗荷谷の地で歓迎をもって受け容れられている。

駿河台キャンバス
空に向かうモダニティ

  教室や研究室、図書館に加えて、同窓生のための施設のほか全学的に使われる会議室やラウンジ等、多機能な用途が積層した、20階建ての都心型高層キャンパスである。外観は、キャンパスで学ぶ多様な個性のある人材が将来に向かって上昇していくイメージを垂直性のあるファサードにて表現した。中間階にはガラス張の連絡階段を設け、生き生きとした内部での活動が外部へと発信されていくことを意図した。また、かつてこの地にあった本学の建物で使われていた大理石を各所に再設置することで本学の歴史と記憶を継承することを目指した。

 本キャンパスが地域と共生する防災上の拠点としても機能するべく、免震構造を採用し、避難者が72時間滞在することが可能なよう、非常用発電機、緊急排水設備、防災備蓄倉庫等の設備を備えている。

 また、将来の間仕切り変更が容易になるよう、柱は全て外壁側にまとめる大スパン構造とし、さらに、太陽光発電をはじめ自然換気や屋上緑化などの様々な省エネルギー手法を取り入れることにより20%以上の省エネを達成し、使い勝手の良い、環境に優しい持続可能なキャンパスを目指した。

 総合設計制度により設置した四季折々の植物が楽しめる豊かな公開緑地により、建物周りは地域の方々が憩う場となっている。

 今回、法学部の都心移転の実現により「中央大学のカタチ」が大きく変わり(学生定員でいうと、多摩が55%、都心が45%となり、半分近くが都心で学ぶことになる)、多摩と都心の二大キャンパスの時代に入る。都心キャンパス整備が一段落し、今後は、郊外型キャンパスとして緑豊かな環境を活かしたグローバル・キャンパスを目指す多摩キャンバスの整備が控えている。


(文/中央大学常任理事 法科大学院教授 大貫裕之)
撮影/ Kouji Okamoto (※のみ)



茗荷谷キャンパス

中央大学 茗荷谷キャンパス 外観

春日通りに品格ある顔をつくる茗荷谷キャンパス外観(※)



中央大学 茗荷谷キャンパス 外観2

伝統を表すレンガの中に未来に開かれたガラス窓を仕込んだ



中央大学 茗荷谷キャンパス 石のアーチ

旧駿河台校舎の尖頭アーチを模した石のアーチ 夕景(※)



中央大学 茗荷谷キャンパス 吹き抜け

校舎全体をつなぐ吹き抜けは、地下2階までのアクティビティが見渡せる(※)



中央大学 茗荷谷キャンパス 吹き抜け2

校舎の中心に設けた太陽の光を取り込む明るく開放的な吹き抜け(※)



中央大学 茗荷谷キャンパス 学術研究団体の学生研究室

自然光スペクトルの学習効果のある照明と植栽を配置した地下2階学術研究団体の学生研究室(※)



中央大学 茗荷谷キャンパス 学生食堂

ミドルテンプルを模したステンドグラスや内装の地下1階学生食堂(※)



中央大学 茗荷谷キャンパス 学生食堂2

食堂内通路は光天井と床パターンを揃えて法の規範を演出(※)



中央大学 茗荷谷キャンパス 法学部図書館

ミドルテンプルのカラースキームで格式を表現した4階法学部図書館(※)



中央大学 茗荷谷キャンパス 1階特大教室

中央大学カラーでまとめた1階特大教室はホールとしても利用される(※)



中央大学 茗荷谷キャンパス 5階ラウンジ

屋上庭園に面したコミュニケーションスペースとなる5階ラウンジ(※)



中央大学 茗荷谷キャンパス 屋上庭園

四季折々の花が咲く屋上庭園



駿河台キャンパス

中央大学 駿河台キャンパス 外観

駿河台キャンパス外観…中央部に階段を内包したガラスカーテンウォール



中央大学 駿河台キャンパス エントランス前

エントランス前の緑地空間



中央大学 駿河台キャンパス 中間階の連絡階段

内部ラウンジ空間と各階教室をつなげる中間階の連絡階段は、外観上の特徴にもなっている



中央大学 駿河台キャンパス 4階大教室前のラウンジ空間

久住有生氏による左官壁が配された4階大教室前のラウンジ空間



中央大学 駿河台キャンパス エントランスホール

外部緑地空間とラウンジが一体となったエントランスホール




中央大学 駿河台キャンパス 4階大教室

全学的なイベントや会議等にも使われる4階大教室




中央大学 駿河台キャンパス 4階大教室

ロースクール、ビジネススクール共用の教室 外観を引き込むライン天井とした




中央大学 駿河台キャンパス 12階図書室

カウンター席やソファ席等様々な利用形態に合わせた12階図書室




中央大学 駿河台キャンパス 模擬法廷

5階ロースクール模擬法廷




中央大学 駿河台キャンパス 模擬法廷

ディスカッション、プレゼンテーションの場となる14階ビジネススクールコモンズ




中央大学 駿河台キャンパス 19階カフェテリア

イベントや憩いの場として使われる19階カフェテリア



【印刷用記事】
新世紀のキャンパス 茗荷谷キャンパス・駿河台キャンパス/中央大学