新世紀のキャンパス 和泉ラーニングスクエア/明治大学

明治大学キャンパス



歴史の継承

 和泉ラーニングスクエアは、明治大学の創立140周年事業としてのキャンパス整備計画の一環で、2022年3月に竣工した。創立80周年にあたる1960年に竣工した和泉第二校舎の建て替えになる。

 整備計画は、和泉第二校舎を設計した堀口捨己先生(本学建築学科創始者)の精神を現代版に置き換えたものとしている。建物単体ではなく、ほかの建物や中庭等との動線を含めたキャンパス全体での回遊性をデザインし、出会いや交流が多く生まれることを意図している。

新しい時代の、新しいキャンパスのあり方

 整備計画の最中に新型コロナウイルスの感染拡大があり、オンライン授業が急速に広まった。どこにいても学べる環境が整いつつある時代に、明治大学は、新しい時代の、新しいキャンパスのあり方を模索してきた。

 同級生や先輩、後輩と共に学び合える空間。リモート授業に没頭できる空間。キャンパスにいながら、安らげる空間。和泉ラーニングスクエアは、そうした新しいキャンパスのあり方を体現した建物となっている。

 大学での学びは、学生が主体的・対話的に学ぶアクティブラーニングが定着してきている。和泉ラーニングスクエアがある和泉キャンパス(東京都杉並区)では、主に学部の1・2年生が学んでいる。大学に入って間もない学生にそうした新しい学びへの関心を高めてもらえるように、和泉ラーニングスクエアでは、「人が集まる場所をつくり、その空間を魅力的に演出する」ことを目指した。具体的には、「いつでも気軽に来やすく、親しみやすい空間」、「ここで勉強していたらかっこいいなと思えるスタイリッシュな空間」、「居心地が良くて、長く滞在できる空間」をコンセプトにしている。

 環境にも配慮した設計となっており、従来の建物で必要なエネルギーの50%以上の消費量削減を実現し、環境省からZEB ready(ZEB:Net Zero Energy Buildingを見据えた先進建築物)の認証も得ている。

“学生の姿”が主役となる空間設計

 和泉ラーニングスクエアの各施設は、学びの楽しさが伝わるような、遊び心のある工夫にあふれている。エントランスホールからは、3フロア分の吹き抜けの空間に飛び出すガラス張りの「グループボックス」が一様に見渡せる。学生がディスカッションやプレゼンテーションをしている姿が、建物に入ってすぐに目に飛び込んでくることで、いつでも人でにぎわう、活気あるエントランスホールの空間を演出している。

 エントランスホールは設計の段階から特にこだわった。自然光が落ちる吹き抜けの空間に、自然な動線が生まれるよう少し角度をつけながら3階まで上がる階段を中央に配置して、学生を上階に引き込むように工夫している。

 また、吹き抜け周りの手摺や階段の踊り場にハイカウンターを設置し、広く気持ちの良いスタイリッシュな空間で、いつでも気軽に勉強できるようにしている。

 従来の建物のような、階段やエスカレーター等の人の動きが見える空間デザインではなく、学生が自然とエントランスホールに集まり活動している姿であふれる、まさに学生が主役となる空間を目指した。

 和泉ラーニングスクエアはシンボル的な建物形態や外観をデザインした建築ではなく、学生の活動そのものがデザインになっている。実際に学生の利用が始まってから、ゼミ活動等学生主体の様々な活動が常に満ちあふれ、活気ある空間となっている。

記憶に残る和泉キャンパスの原風景づくり

 和泉キャンパスでは、このキャンパスで過ごす学生達の記憶に永く残り、誇りとなる建物を目指し、和泉図書館、正門、外構整備等「学生達の誇りとなる建物やキャンパス」、「記憶に残る和泉キャンパスの原風景づくり」の実現を目指し整備計画を進めてきた。

 学生達には、「明治大学のキャンパスで、多くの友人や多様な学び等、様々な出会いがあった」と、卒業してからも、その思い出の風景を色々な人に話してもらいたい。そして、一生付き合える友人という財産を、この明治大学のキャンパスで多く得てほしい。



明治大学 エントランスホール

「学生の姿が主役となる空間設計」が大きな特徴。
エントランスホールからは、吹き抜けの空間に飛び出す「グループボックス」が一様に見渡せる



明治大学 吹き抜け

各フロアの共用部分には、学生同士が学び合い交流できるスペースを数多く設置



明治大学 外観

外観 ※2022年5月現在工事中



明治大学 グループボックス

【グループボックス】
学生が協働する場。学びの楽しさが外からも見え、学生の遊び心を刺激する



明治大学 グループボックス

テラスにいくつも設置されている木のボックスは、思わず入りたくなる



明治大学 ラーニングコモンズ

ラーニングコモンズ①
リビングのようにリラックスできるオープンなスペースや、集中できる個人のブース。
学習意欲をかき立てる環境が、主体的な学びを後押しする



明治大学 ラーニングコモンズ

ラーニングコモンズ②



明治大学 ラーニングコモンズ

カイダン教室①
机も椅子も取りはらった、カイダンを舞台にした教室。
既成概念に囚われない空間が、自由な発想や議論を促す



明治大学 ラーニングコモンズ

カイダン教室②



明治大学 ラーニングコモンズ

カイダン教室③



明治大学 ラーニングコモンズ

プレゼンテーションラウンジ①
オープンなラウンジスペースにカウンターやベンチが設置されている。
偶発的な出会いや交流が、新たな学びを生む



明治大学 ラーニングコモンズ

プレゼンテーションラウンジ②



(文/明治大学 広報担当副学長 浜本牧子)


【印刷用記事】
新世紀のキャンパス 和泉ラーニングスクエア/明治大学