新世紀のキャンパス 新3号館/奈良学園大学
キャンパス統合の背景
学校法人奈良学園が運営する奈良学園大学は、歴史的な経緯から2014年度の発足以来、奈良県生駒郡三郷町の三郷キャンパス(人間教育学部人間教育学科)と奈良市の登美ヶ丘キャンパス(保健医療学部看護学科・リハビリテーション学科及び大学院看護学研究科)の2キャンパス体制であったが、距離的な制約から2学部の連携が困難であり、運営に問題を抱えていた。この課題を解決し、学生へのサービス向上と教育の質向上、及び大学の魅力向上を図るために2022年4月に登美ヶ丘キャンパスに統合した。登美ヶ丘キャンパスには2008年~2009年に同じく学校法人奈良学園が運営する奈良学園幼稚園、奈良学園小学校及び完全中高一貫の奈良学園登美ヶ丘中学校・高等学校が開設されており、9万5000㎡の登美ヶ丘キャンパスに幼稚園から大学院までが集結することになった。近隣には、研究所や国会図書館を有する関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)があり学術研究の場としても魅力的な環境にある。
新3号館の設計コンセプトとフロア構成
キャンパス統合にあたって、既存の1号館、2号館及び体育施設であるアリーナに加えて、新たに3号館(8447.05㎡、4階建て)を建設した。設計に際して留意した点は以下のとおりである。
- 主として使用する人間教育学部だけでなく、保健医療学部の学生や教員も集まる交流の場を設けること
- 学生と教職員の距離が近い面倒見の良い大学を実践するため学生と教員とが互いに学んでいる姿を常に共有できるようにすること
上記(1)のために、1階を「交流と相互啓発の空間」として、オープンコモンズを配置し、くつろいだり食事をしたりすると同時に、研究成果を発表したり、演奏会等もできるようにした。また、「本の森」をイメージしたライブラリーコモンズ(図書館)も1階に配置し、保健医療関係の図書がある2号館の図書館とも相互に行き来できるようにした。
上記(2)のために3階と4階は「学び合いの場」として、人間教育学部の専門分野ごとにラーニングコモンズを取り囲むように教員研究室と講義室を配置し、ガラス張りとした。いつでも誰かに相談したり、議論したりといったことが自然にできるようにした。また、各フロアの中心にはセンターコモンズを配置し、学生の居心地の良い空間を設けた。2階は「専門性を高める空間」として、各種の実習室(調理室、理科実験室、図工・被服実習室、特別支援演習室)、音楽関係のミュージックラボ、器楽演奏室、ピアノレッスン室、幼稚園から小学校への接続について学ぶ幼小接続室を配置している。
新校舎において実現する教育カリキュラムの特長
新校舎を主として利用する人間教育学部人間教育学科では、乳幼児教育専修(幼稚園教諭一種免許状及び保育士資格取得)、小学校専修(小学校教諭一種免許状取得)、中等国語専修(中学校・高等学校教諭一種免許状(国語)取得)の3専修から構成される人間教育学専攻、中等数学専修(中学校・高等学校教諭一種免許状(数学)取得)、中等音楽専修(中学校・高等学校教諭一種免許状(音楽)取得)の2専修から構成される中等(数学・音楽)専攻の2専攻5専修があり、自分に合った専門性を選択できる。また、特別支援学校教諭一種免許状(知・肢・病)や司書教諭と併せて、複数免許を取得可能なカリキュラム構成となっている。各人の可能性を伸ばすきめ細かい指導によって専門的な知識・技術の習得を支えるために学生同士が自主的に学び合い伸びてゆく環境を提供する新校舎のつくりとなっている。
人間教育学と看護学やリハビリテーション学とはいずれも人に関係する学問分野であり、互いに共通分野が存在する。これらの複数の学問分野の融合領域についても今後社会的なニーズがあると考えられ、キャンパス統合を機に「知の融合」についても期待するところである。
新3号館の全景と右側は時計回りに2号館及び1号館
住宅地の奈良市登美ヶ丘地区に広がるキャンパス
ライブラリーコモンズ(図書館)
全学の学生が集う1階のオープンコモンズ
3階及び4階の中心に設けられたセンターコモンズ
ラーニングコモンズ
教員と学生が互いに学ぶ姿を共有するように設計された教員研究室
講義室
電子キーボードを備え、個別指導を効果的にできるミュージックラボ
幼稚園から小学校へのスムースな子ども達の学びのための指導方法を学ぶ幼小接続室
(文/学校法人奈良学園・理事長 伊瀨敏史)
【印刷用記事】
新世紀のキャンパス 新3号館/奈良学園大学