グローバル人材をどう育成するかⅠ(カレッジマネジメント Vol.168 May-Jun.2011)

「新卒採用にグローバル枠」「企業が留学生の採用を強化」。
いずれも昨年,新聞や週刊誌を賑わしたフレーズである。1990年以降だろうか,企業も大学も国際化やグローバル化が盛んに言われるようになった。それ以降,大綱化とも相俟って,大学では国際やグローバルを冠した学部・学科が次々と設置されてきた。海外の大学と連携する大学も増加し,留学生の受け入れ数も増加した。


しかし,大学が長い時間をかけて,このような取り組みを徐々に強化する一方で,企業を取り巻く環境はここ数年急速に変化した。2005年に日本の人口が減少(厚生労働省人口動態統計)に転じる一方,新興国では人口が増加しており,成長のフィールドを海外に求める企業が増えてきている。従来の外国人採用は,現地法人のオペレーション担当を中途で採用するのが主であった。しかし,近年は市場や従業員のグローバル化に伴い,多様な人材のマネジメントを担うグローバル人材が急速に必要となっているのである。

まさに,ここに来て,グローバル化は「市場」だけでなく「人材」もという,次の段階に入ったといえるだろう。そのため,これまでは将来の幹部候補生は日本の学生を新卒で採用していた企業であっても,国際競争力を高めるため,国籍を問わず優秀な学生を採用せざるを得なくなっているのである。

パナソニックやファーストリテイリングのように,国籍を問わない新卒採用に大きく舵を切る企業は,まだ一部かもしれない。しかし,製造業だけでなく,サービス業にも,グローバル化の波は着実に押し寄せている。マーケット動向を見てみると,その勢いが加速するのは間違いないと思われる。

本誌では今号と次号の2回にわたり,グローバル市場で活躍するためには,どのような力を身につける必要があるのかそしてグローバル人材を育成するために大学は何をすべきなのかについて考えていきたい。

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リクルート進学総研所長・カレッジマネジメント編集長

小林 浩

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