進学ブランド力調査2023 進学希望分野の7カ年の推移から見えること
高校生の進学動向を明らかにするため、リクルート進学総研で2008年から実施している「進学ブランド力調査」。その2023年の調査結果について2023年7月に公表したが、本記事では、調査のなかで尋ねている「進学希望分野」において、2017年からの7カ年にわたる結果について、全体・男女別に見てみたい。この7カ年の間、2020年から始まったコロナ禍や入試改革等、高校生自身の学びや生活に直接的に影響することが数多く起きたとともに、働き方改革やAI等の技術の進展等のなかで、高校生を取り巻く社会環境もめまぐるしく変化してきた。高校生の分野選びにそれらの要因はどのように関わっているのか。3つのポイントにまとめてみた。
工学系でない「情報」系希望者が年々増加。課題を整理し、分析したうえで、活用できる人材育成への期待が高まり、文理融合・文理横断の教育の必要性が盛んに聞かれるようになったこと、工学系以外の情報系学部が増加していることが背景にあると考えられる。
なおテクノロジー利用や高校生が接する情報のあり方が多様化するなかで、「情報」という分野名から関連付けられる具体的な学びの内容、あるいはその先の仕事イメージについても変化し、「情報」という分野を希望する背景も変化している可能性もある。
「観光・コミュニケーション・メディア」「外国語」「国際関係・国際文化」はコロナウイルス感染拡大が始まった2020年より減少した。観光や留学が進学後のリスクになることを避けた結果だと推察され、コロナ禍が落ち着いた今年は回復が期待されたが、いずれも減少が止まっていない。今後、海外との交流がどれくらい戻るかが鍵となりそうだ。
かつては女子の活躍機会は少なく、資格取得により能力を公平に証明できる分野においてのみキャリアを積むことができたため、「教育・保育」「家政・生活科学」「外国語」「看護」系が女子に人気の分野であったが、この7カ年を見るとコロナ禍を境に増加→減少傾向に変わっている。一方増加しているのは「医学・歯学」「生物・農・獣医・林産・水産」「美術・デザイン」系で、長期的に見ると、女子では「法律・政治」「経済・経営・商」といった社会科学系の分野も増加傾向にある。働き方改革が浸透してきたことによって、仕事をしながら子育てもするというライフスタイルが浸透するなかで、女子の社会における活躍機会も広がってきたことが影響していると考えられる。
※進学ブランド力調査2023の結果及び調査概要はこちらをご覧下さい。