進学センサス2016(カレッジマネジメント Vol.201 Nov.-Dec.2016)
「偏差値って操作できるんですよね」。これは、インタビューした女子高校生の言葉である。これにはいささか驚いた。しかし、それも当然かもしれない。
文部科学省が発表した2015年度(平成27年度)における一般入試の入学者比率は56.1%(国立84.6%、公立73.2%、私立49.0%)となっている。今や一般入試の入学者は半数に過ぎないのである。偏差値とは、いわば模試で算出される一般入試の“レベル”である。一般入試の割合を変動させることで、偏差値は操作し得るものだと、高校生は言っているのだ。かつて絶対的な指標であった偏差値が、絶対的でなくなってきた。これを、高校生は冒頭のような言葉で表現しているのではないだろうか。
では、イマドキの高校生は一体どのように進路を決めているか。そうしたリアルな高校生の進路選択状況を知るために、1990年代より、『リクルート進学センサス』を実施している。高校を卒業して進路が確定したばかりの生徒に、自身の進路選択のプロセスを振り返ってもらうという調査である。もちろん、対象者は、大学進学者だけではない。大学、短大、専門学校など、高校生の進路選択は様々であり、進路を選択するプロセスは一様ではない。多くのステークホルダーやメディア、学事などが複雑に絡み合っている。長期にわたり、多くの高校生のデータを集めることで、ある程度定量的に、エビデンスベースで高校生の進路選択プロセスが解明されるようになってきた。
高校生は、やはり学びたい学部・学科・コースを中心に選んでいる。しかし、選択する際“トリガー”になる事象や時期は、学部・学科、男女、学校種によって、大きく異なっていることが分かる。例えば、高校生は、大学、短大、専門学校に異なる“メリット”を求めている。また、社会科学系と医療系では、進路選択の幅や見ているポイントも全く異なっている。さらに、社会環境の変化によって、高校生の進路選択は大きな影響を受けている。留学についても、その価値は、ここ数年で就職を意識したものに変わりつつある。今回の特集が、高校生の進路選択行動について、一緒に考える一助となれば幸甚である。
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リクルート進学総研所長・カレッジマネジメント編集長
小林 浩